JAMI・JSCP合同委員会トップePath(Bridge)
我が国では世界に先駆けて超高齢社会に直面する中、国民の健康寿命の延伸を図るとともに、出生率低下への対策や社会保障給付費の適正化は喫緊の課題であり、個人の健康維持・増進のために医療情報と日常生活を通じて得られる健康情報を活用することが重要となっている。医療健康情報を統合管理するPersonal Health Record(以下、PHR)は、電子カルテや介護システムとの連携により医療健康情報を俯瞰することができ、患者主体医療の推進、頻発する災害やパンデミック対策などの核心ツールとしても期待されている。一方で、これまで標準の欠如から相互運用性の課題を残してきた。
2018〜2020年度AMED事業「クリニカルパス標準データモデルの開発および利活用」(以下、ePath)では、従来の電子カルテで実現できなかった医療プロセス管理を医療プロセスの基本単位である「Outcome、Assessment、Task」(患者・ケアの対象者の望ましい状態、その評価基準、実際の行為)の3層構造による「OATユニット」により実現し、標準リポジトリの策定と医療データの統合解析から医療改善サイクルのLearning Health System(以下、LHS)を実証した。ePathは、国内シェア合計60%超の大手電子カルテベンダーによる電子カルテ製品への積極的なパッケージ化と国内医療機関への導入が進んでおり、今後は国際規格化による海外市場開拓が重要である。ePathの対象範囲は入院診療のみならず、外来パスや治験管理プロセスへと展開している。さらに本人による疾病管理や疾病予防のための健康管理等への応用が可能であり、一般化されたプロセス管理モデルにより施設内パスからPHR等まで範囲を広げた医療健康プロセス管理へと拡張することが可能である。
個人の日々の医療健康管理(出生時の母子健康管理に始まる)を生涯にわたり支援するサービスやシステムは、まだほとんど見られず、新たな市場拡大領域と考えられる。国際標準が形成されていない現状においてこそ国際競争優位を先行的に確保するため、日本が主導して医療健康プロセス管理モデルの国際規格化をはかる必要がある。国際規格化とともに、そのシステム基盤を先行的に構築することは、デジタルヘルス領域の多様なビジネスを先行的に創出することに繋がる。
そこで本研究では、個人の医療健康プロセス管理のための一連のモデル(概念モデル、情報モデル、プロセス管理モデル等)の国際規格を策定する。規格の開発過程において、モデルの妥当性検証、フィージビリティスタディのため、電子カルテとPHRにわたる標準モデルに準じたシステム実装を行い、主に慢性疾患や外来化学療法、周産期の患者さんを対象として実証実験を行う。